
赤ちゃん・子どもの皮膚の特徴
赤ちゃんや子どもの皮膚の特徴を以下に示します。
- 外界の刺激から肌を守る表皮の厚さは大人の約半分
- 肌の潤いを保つ皮脂の分泌も生後2〜3か月頃から低下
- 体は小さいのに汗腺の数は大人と同じで汗をかきやすい
- これらの要因により皮膚から逃げていく水分(水分蒸散量)が多く乾燥しやすい
- 皮膚の免疫機能が未熟
赤ちゃんや子どもの皮膚は、大人とほぼ同じ構造ですが、大人に比べて表皮が薄いためバリア機能が未熟です。そのため、外部からの刺激に対して非常に敏感で、乾燥や炎症が起こりやすいことが特徴です。そして掻き壊したところに細菌感染による"とびひ"を発症したり、ウイルス感染で"水いぼ"ができたりします。また、炎症のある皮膚から鶏卵やナッツ類などの環境中のタンパクが侵入することによって"食物アレルギー"を発症する「経皮感作」も重要な問題です。
水いぼ(伝染性軟属腫)とは
"水いぼ"は、医学的には「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」といいます。名前の通りとても感染力が強いウイルスによる皮膚の病気で、特に乾燥肌やアトピー性皮膚炎のある子どもに好発し、夏に流行します。皮疹の特徴はツヤツヤと光沢があって、真ん中におへそのようなくぼみ(臍窩)のある3〜5mmの丘疹(ぽつぽつ)で、いぼの中に白色の粥状(じゅくじょう)物を含みます。この粥状物にウイルスが存在し、掻き壊して周りの皮膚に付着することで次々と感染が広がります。


水いぼの原因
水いぼの原因は、ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)ウイルスです。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスのような空気を介した感染ではなく、直接ウイルスに触れることで感染が広がる「接触感染」です。ですから、保育園などの皮膚と皮膚が接触する機会が多い場所や、家族でバスタオルを共有することで感染が広がります。
なかでもアトピー性皮膚炎の患者さんでは炎症や乾燥により皮膚のバリア機能が低下しているためウイルスが皮膚に侵入しやくすく、さらにアトピーによる痒みで掻くことにより水いぼが壊れてウイルスが広がりやすい状態にあります。
ウイルスに感染してから症状が出るまでの潜伏期間は2週間から2-3か月と少し長めです。
水いぼの症状
水いぼをピンセットなどで強くつまむと、中央のくぼみから白色の柔らかい内容物が出てきます。これは軟属腫小体と呼ばれるウイルス感染により変化した皮膚の細胞の塊です。この塊により芯があるようにみえるかもしれません。
水いぼは体や手足はもちろん、顔や外陰部など全身どこにでも生じます。特にわきの下、胸部、上腕内側などの皮膚が薄くて擦れやすいところに生じやすく、掻いて水いぼが壊れることで感染を広げる「自家感染」により多発する傾向があります。特にアトピー性皮膚炎のように掻き壊しが激しい人で急速に増加することがあります。
水いぼと水痘(みずぼうそう)との違い
同じ「水」が付く皮膚の病気に水痘(すいとう)=みずぼうそう がありますが、原因や症状、対処法は全く違います。
水痘は、ヘルペスウイルスの一種である「水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルス」の初感染による症状で、紅斑(赤い発疹)、丘疹(ぽつぽつ)、水疱、膿疱(のうほう)(膿(うみ)をもった水疱)、痂疲(かひ)(かさぶた)といった様々な皮疹が同時に混在してみられ、乳幼児や学童期にかかりやすく非常に感染力が強く、特に免疫の低下している人への感染拡大には注意が必要です。発疹は頭皮から顔面、体など全身に生じ、かゆみや疼痛を伴うことがあります。
主に上気道からの空気感染(飛沫感染と接触感染もあります)が主な感染経路で、水疱や膿疱の中にはウイルスが存在しますが、痂疲の中にはウイルスはいないため感染源とはなりません。そのため、すべての発疹がかさぶたになれば登園・登校することができます。治療には抗ウイルス薬の内服や軟膏の塗布を行います。
このように水いぼとみずぼうそうは、いずれもウイルス性の発疹ですが、症状や経過が違います。
水いぼ | 水痘 | |
---|---|---|
原因ウイルス | 伝染性軟属腫ウイルス | 水痘帯状疱疹ウイルス |
主な症状 | 中央にくぼみのある光沢の丘疹(ぽつぽつ)、白色の粥状内容物を含む | 紅斑(赤い発疹)→丘疹(ぽつぽつ)→水疱→膿疱→痂皮(かさぶた)と変化し、色々な発疹が混在する |
好発部位 | 全身どこでも(特にわきの下、胸部、上腕内側など擦れやすい部位) | 頭皮、首、顔面、胴体の全身に生じやすい |
主な感染経路 | 接触感染(皮膚と皮膚の接触、タオルの共有など) | 主に上気道からの空気感染(飛沫感染、接触感染も) |
登校(園)制限 | なし(ただし浸出液や多数の皮疹がある場合は他人への感染に注意) | すべての発疹がかさぶたになるまで出席停止 |
-
水いぼ
-
水痘
- ※ 写真提供:兵庫医科大学 夏秋 優 先生
水いぼの対処法・治療法、予防法
水いぼの対処法・治療法
水いぼは自然に消退していくため放置してもよいとされます。しかし、自然治癒までに長いと数年かかることや、その間に水いぼがさらに増えたり、他人にうつしたりする可能性もあるため痛みは伴うもののピンセットでの摘出や液体窒素での除去など積極的に治療する考え方もあります。また、保険適用外となりますが最近では痛みを伴わない銀イオン配合クリームという選択肢もあるため医療機関にご相談ください。
水いぼの予防法
水いぼは特に皮膚のバリア機能の低下しているアトピー性皮膚炎の患者さんや子どもに感染しやすいためスキンケアや軟膏治療による皮膚のバリア機能の強化が感染予防や治療に大切です。
入浴時に皮膚をゴシゴシ擦らないこともバリア機能を低下させないことには大切です。
水いぼによる登園・登校の制限はありませんが、水いぼが多数ある場合や浸出液が出ている場合は衣服などで皮膚を覆って他の人への感染を防ぎます。
重要なことは「プールの水では感染しない」ため、プールを禁止する必要はありません。ただしラッシュガードを着用して皮膚を覆ったり、直接肌に接触するタオルやビート板は個人専用のものを用意しましょう。
まとめ
水いぼは、伝染性軟属腫ウイルス感染による皮膚疾患で、アトピー性皮膚炎の患者さんや小児に好発し、夏場に流行します。
水いぼは時間をかけて自然に治ることもありますが、なかなか良くならない場合は小児科や皮膚科で適切な指導や処置を受けましょう。また、軟膏治療やスキンケアで皮膚を良い状態に保つことが、水いぼの治癒と感染予防への近道です!
監修
加藤泰輔(かとう たいすけ)
かとうこどもクリニック アレルギークリニック 副院長
小児科専門医・アレルギー専門医
愛知医科大学医学部卒業後、あいち小児保健医療総合センター アレルギー科や富山大学附属病院を経て現職。
専門は各種アレルギー疾患。アレルギー疾患の治療だけでなく、予防に関する啓発活動にも力を入れている。
