肌トラブル情報館
デリケートエリアのトラブル

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみ 原因・症状・治療法

この記事をシェアする
  • Facebook
  • line
  • X
おしりのかゆみイメージ画像’

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみとは

おしりのかゆみは、さまざまな原因で引き起こされる症状ですが、温水洗浄便座が普及した今日においては、清潔に保つことを思うあまりに、排便後の洗い過ぎが原因の場合が増えています。
また、排便後にトイレットペーパーで拭きすぎることや汗などによる蒸れ、下着による擦れ、細菌感染によるかゆみもみられます。さらには、おむつ・おしりふき・生理用品・衣類などによるかぶれ(接触皮膚炎)を起こしやすい部位でもあります。
最近では、便失禁や尿失禁に関連する皮膚炎である「失禁関連皮膚炎」に伴うかゆみもあるといわれており、小児や高齢者など皮膚が弱い方に起こりやすい傾向があります。

おしりのかゆみついては、羞恥心から誰にも相談できずに悩んでいる方も多いかもしれません。

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみの原因

おしりのかゆみの主な原因を以下に示します。

過剰衛生

清潔を意識するあまり、温水洗浄便座の強い水圧で洗ったり、トイレットペーパーで擦るように拭き取ったりするのは、おしりの皮膚の刺激になります。温水洗浄便座で必要以上に洗うと、皮膚のバリア機能を担っている皮脂膜や角層内の保湿成分までもが洗い流されてしまい、皮膚が乾燥し、かゆみを感じやすくなってしまいます。また、バリア機能が低下すると、外部の刺激を受けやすく、かぶれなども起こしやすくなってしまいます。

皮膚の乾燥によるかゆみに関する詳しい情報は「乾燥肌のかゆみ(皮脂欠乏性湿疹) 原因・症状・治療法 」をご覧ください

便通異常

頻回の下痢や便失禁などで、おしりの皮膚が便にさらされて刺激を受けることでかゆみが起こります。さらに、排便後に繰り返し肛門部を拭くことで、肛門周囲の皮膚が傷つき、かぶれなども起こしやすくなってしまいます。このように、便失禁から皮膚のかゆみやかぶれが引き起こされる状態を「失禁関連皮膚炎」といいます。

かぶれ(接触皮膚炎)

汗やおむつ・おしりふき・生理用品・衣類などによるかぶれ(接触皮膚炎)が原因でかゆみが起こることがあります。衣類によるかぶれには、染料が原因の場合、柔軟剤やすすぎ残しの洗剤が原因の場合もあります。

かぶれに関する詳しい情報は「かぶれ(接触皮膚炎) 原因・症状・治療法 」をご覧ください

感染症

皮膚常在菌のカンジダ菌の増殖によってかゆみが起こることがあります。溶血連鎖球菌によるかゆみは、皮膚の発赤を伴い、小児に多いのが特徴ですが、成人にもみられます。ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症である尖圭コンジローマでは肛門や陰部に小さなイボができ、かゆみを伴うことがあります。

その他の原因

  • 全身疾患に伴うかゆみ:血糖コントロール不良の糖尿病や肝疾患の方や、抗がん剤、免疫抑制剤などの治療を受けている方にみられることがあります。
  • 肛門疾患によるかゆみ:痔瘻(あな痔)、痔核(いぼ痔)などによる粘液が付着することよって起こることがあります。
  • 食物によるかゆみ:下痢を悪化させる食品であるカフェイン飲料、アルコール飲料、香辛料、乳製品などの過剰摂取や、痒みを引き起こす物質(ヒスタミン)を多く含む食品である魚介類、ナッツ、チョコレートなどの過剰摂取で起こることがあります。
  • 悪性腫瘍によるかゆみ:肛門癌やパジェット病、ボウエン病など肛門の腫瘍が原因で起こることがあります。
  • 蟯虫(ぎょうちゅう)などの寄生虫によるかゆみ:小児に稀にみられることがあります。

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみの症状

初期症状はおしりのムズムズとした違和感です。排便後や入浴後に感じることが多く、掻くことで湿疹ができ、さらにかゆくなります。ひどくなると常にかゆい状態に陥ることもあります。掻くことで皮膚に傷やびらんができると、ヒリヒリして水がしみるなどの痛みが発生します。

おしりにみられる皮膚症状は、初期は赤くなることが多いですが、慢性化するにつれてふやけたように腫れ(浮腫)、白くなっていきます(脱色)。肛門周囲の皮膚が浮腫状になると、肛門周囲のしわが盛り上がって腫れたようになるので痔核(いぼ痔)と間違われることもあります。

痔に関する詳しい情報は「痔 原因・症状・治療法 」をご覧ください

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみの対処法・治療法、予防法

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみの対処法・治療法

軽度のかゆみは、次の項目で示す予防法を実践することで改善します。日常のおしりケアを見直し、「洗い過ぎない清潔」を心がけましょう。

かゆい時には以下の対処法・治療法(薬物療法)も有効です。

原因となるような接触を避ける

かゆみの原因と考えられるパッドや下着、柔軟剤の使用をやめましょう。また、小児や高齢者などオムツをしている場合は、便が長時間多量に皮膚に付着しないようにオムツ交換をこまめに行いましょう。

冬場に過剰な厚着をしない

体温が上昇することでかゆみが強まります。冬場、特に睡眠中は暑くなっても脱ぐことができないため、厚いパジャマや睡眠中の電気毛布の使用は避け、暑ければ無意識に外せる掛け布団で調節しましょう。

薬物療法

痛んだ皮膚の修復には適度な保湿が重要です。入浴後に皮膚への刺激が少ない保湿剤の使用やワセリンなどの塗布がおすすめです。皮膚の湿潤(ジュクジュクした状態)が強い場合は、湿潤をコントロールする作用のある亜鉛華軟膏を使用する場合もあります。

掻くことが症状の悪化に繋がりますので、湿疹がひどくない場合は、痒み止め成分である抗ヒスタミン剤が配合されたかゆみ止め薬で対処します。湿疹がひどい場合はステロイド外用薬を使います。
感染が原因の場合にステロイド外用剤を使用すると、かえって症状が悪化するので、注意が必要です。

おしりのかゆみは様々な原因で起こります。外用薬による治療を続けても症状が改善しない場合は、自己判断せず、早めに皮膚科あるいは肛門科を受診することも大切です。

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみの予防法

おしりを清潔にすることは大切ですが、過剰に清潔にする必要はありません。

温水洗浄便座は水流「弱」で、ぬるめで短時間の洗浄・トイレットペーパーで擦らない

水圧が強すぎたり、長時間洗浄したりすることで、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。水の勢いを弱め、洗浄時間も短くしましょう。洗浄後はトイレットペーパーを優しく当てて水分を取るようにしましょう。トイレットペーパーのみで拭き取る場合も、強く擦らず、優しく拭き取ってください。また、熱すぎるお湯での長時間の洗浄も皮脂が取れてしまうので注意しましょう。

熱いお風呂を避けゴシゴシ洗わない

熱いお風呂は油分を取り除き過ぎてしまい、皮膚を乾燥させます。お湯はぬるめにします。おしりを洗う時は、洗浄効果の強い石鹸は使わず、またナイロンタオルで擦ることはやめましょう。

便通を整える

おしりのかゆみは下痢が原因の場合が多いといわれています。食生活に注意し、便通を整えましょう。下痢を悪化させるような食品(アルコール、果物、甘味料、カフェイン)を取り過ぎないようにしましょう。また、便の性状を改善させるデンプンを多く含む白米を1日2膳程度摂取するのもおすすめです。

まとめ

おしり(肛門・肛門周囲)のかゆみは、さまざまな原因で引き起こされる症状ですが、温水洗浄便座が普及した今日においては、洗い過ぎが原因となることが多くなっています。
まずは、おしりケアを見直して「洗い過ぎない清潔」を心がけることが大切です。
市販のかゆみ止め外用剤で治療することもできますが、症状が改善しない場合は、その他の原因が疑われますので、早めに皮膚科あるいは肛門科を受診し、原因を突き止め、適切な治療を行いましょう。

監修

高橋 知子(たかはし ともこ)

亀田総合病院消化器外科部長
東京女子医科大学卒業。亀田京橋クリニックにて、全国でも珍しい直陽と肛門の疾患に特化した「女性のためのこう門・おつうじ外来」を担当。専門分野は肛門疾患、排便機能障害、分娩後骨盤底障害。女性たちの便秘や痔、便失禁、直腸脱などのトラブルに対して、専門的な治療とともに生活指導を行っている。

この記事をシェアする
  • Facebook
  • line
  • X
肌トラブル情報館トップへ
ページトップに戻る